油選びに迷うあなたに
最近マスコミではコレステロールの必要性を報告する記事が盛んだ。リノール酸の油のとりすぎはアレルギーを招くと言われて、今はオリーブ油が人気に。そしてシソ油や亜麻仁油も注目されてきた。一体どんな油をとればよいのか?
札幌で自然食品店「まほろば」を夫の周平さんと経営、料理教室、カウンセリング、農場も運営してきた宮下洋子さんの「高一のときから、45年のマクロ歴」という実体験に基づいた貴重な油のお話。
「厳密なマクロビオティックは、治療食としては確かに劇的な効果が出る場合もあるけれど、長期間に渡って続けるのは経験的にも問題があります」まず、アトピーの子たちにバターをすすめると、治ってくるという驚きの話から始まった。マクロビオティツクは厳密な玄米菜食主義として知られるが、宮下さんは20年前頃から、コレステロールが人体の細胞膜の構成要素であることや、脳神経系の40%で使われ性ホルモンなどを作る大切な栄養素で、脂肪の代謝をすすめるだけでなく、副腎皮質ホルモン(自然なステロイド)やビタミンDの前駆体として体内で重要な働きをすることに気づいていた。お客さんにも日頃からパターやα−リノレン酸のシソ油や、オレイン酸のオリーブ油、そして魚類、卵、肉なども日常の料理に少量取り入れることをすすめてきたという。
「コレステロールが悪者なのではなく、過剰に摂ると、余ったものが代謝されず酸化して血管壁に付着して、動脈硬化などを起こすのです。それよりトランス酸のほうが怖い。液状のリノール酸などの植物油を高温高圧化学処理して、無理に固形化したマーガリンやショートニングには、奇形的なトランス酸ができます。これが正常な脂肪の代謝を撹乱して、動脈硬化をはじめ血管系の病気の引き金になります。デンマークやオランダではトランス酸を含む油脂製品はすでに発売禁止になっている。アメリカでも心臓病学会の要請で、クッキーや菓子など油脂製品にトランス酸含有量の表示が1998年に義務付けられているそうだ。
「2002年に開催された日本脂質栄養学界でも日本人はリノール酸の油の摂取を減らし、加工食品にトランス酸の表示をするよう提言しているのですが、実施されていません」
食用油は、動物性(飽和脂肪酸)、植物性(不飽和脂肪酸)に二分して考えられてきたが、食品に含まれる油脂は主に三種類の脂肪酸で構成されていて、その代表的に多いものによる分類」が次のとおり。
1 飽和脂肪酸(主に動物性脂肪、ヤシ油、ココナッツ油、パーム油などの植物油も)
2 一価不飽和脂肪酸(オレイン酸−オリーブ油、菜種油、動物性油脂にもある)
3 ・多価不飽和脂肪酸
・二価不飽和脂肪酸(リノール酸一紅花油、大豆油、コーン油)
・三価不飽和脂肪酸(α−リノレン酸系、亜麻仁油、シソ油。EPA、DHAなどの魚油も)
リノール酸は酸化しやすい油なので、とりすぎて余ったものが体内で過鞍化脂質や活性酸素のフリーラジカルをおこし、アレルギーや自己免疫疾患や、心筋梗塞、癌体質などを招くといわれるようになった。宮下さんもリノール酸と反対の性質をもつα−リノレン酸のシソ油や、オレイン酸のオリーブ油はポリフェノールも多く酸化しにくいので、バランスを整えるのにすすめているという。油は、短鎖、中鎖、長鎖による分類もある。鎖が短いほど消化されやすい。最近流行の「脂肪になりにくい」と宣伝されている油は、中鎖脂肪酸の構造を加工したジアシルグリセロールが70〜80%くらいで、中鎖脂肪酸が10%だが、いずれもリノール酸系の油であることに変わりはない。とりすぎには注意を。
ところで、ごま油と菜種油はどうなのだろう?
「玄米菜食をやっている人は、炭水化物とごま油や菜種油のとりすぎに気をつける必要があります。たんばく質摂取が少ないうえに、生野菜、香辛料、ハーブ、果物、、酢、糖分など油の消化に必要な酵素や抗酸化力のある食品をあまりとらないので、精製されてないごま油は肝臓の負担が大きい」。また、菜種油には動脈硬化や心臓病の原因になるエルカ酸が含まれている。最近キャノーラ油とよばれる(菜種油)のは、品種改良で低エルカ酸になっているが、不安は残るそう。米ぬか油も高度飽和脂肪酸を多く含むので、こちらもとりすぎにならないようにと。
講座終了後、「お菓子作りにずっと植物油のマーガリンを使ってきましたが、ときどきならむしろパターのほうがいいとわかってよかった。ずっと、疑問に思い不安だったんですよ」と、スッキリとした笑顔で帰られる方がいた。
宮下洋子●自然食品店「まほろば」 |