近藤勇・東京慈恵会医科大学名誉教授が国際学会で世界初の研究発表 |
欧米の研究者から質問相次ぐ
平成14(2002)年10月16日〜19日に、つくば国際会議場において第10回国際ブドウ球菌シンポジウム(International
Symposium on Stashylococciand Staphylococcal Infections;ISSSI)が開催され、近藤勇・東京慈恵会医科大学名誉教授が「AH
SS」による最新の研究発表をされました。 今回の発表は、黄色ブドウ球菌やヘリコバクター・ピロリなどの細菌が細胞分裂をするときに働く遺伝子
ftsZおよびftsAの発現を、AHSSの成分が阻害し、いずれの細菌も死滅させてしまう事実を世界で始めて発見し、検証したものです。
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細菌の遺伝子に作用して、細胞分裂を阻害する物質が 植物成分から発見されたのは世界で始めてで、今回の研究発表では、AHSSが作用して細胞分裂が中断した状態の黄色ブドウ球菌やヘリコバクター・ピロリ
の電子顕微鏡写真も公表されました。この画期的な発表に「AHS Sの成分のなかで細菌に作用する物質は特定されているか」など欧米の研究者から質問が相次ぎ、近藤名誉教授は現在までに構造解析されているいくつかの成分について説明されました。これまでの研究で、AHSSを黄色ブドウ球菌やピロリ菌に作用させると、ごく薄い濃度でも死滅する事がわかっていますが、近藤名誉教授と共同研究しているバイオス医科学研究所(神奈川県平塚市)の三木敬三郎所長によると、遺伝子に作用する物質も含めて細菌に有意に作用するAHSSの成分は14〜15種類あると考えられます。このうち、これまでにほぼ構造解析が終わったものは次の3種類です。
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正常な黄色ブドウ球菌(左)、ピロリ菌(右)、AHSSによって細胞分裂が止まり、死滅したそれぞれの細胞 |
(1)細胞膜と細胞壁を破壊する成分
抗生物質のなかにも細菌の細胞膜に入り込んで細胞膜生成を阻害するものがあるが、AHSSのこの成分は細胞の外から直接、細胞壁と細胞膜を破壊すると考えられる。ポリフェノール・タイプの有機化合物。
(2)遺伝子の合成を阻害する成分
化学合成された抗がん剤にもがん遺伝子に対して同様な作用をするものがあるが、副作用が強いなどの問題があるゥ AHSSの成分から、副作用のない抗がん剤も期待できる。核酸に近い有機化合物。
(3)細胞壁を壊す成分
(1)の成分とは別に、分裂期の細胞壁だけに特異的に作用し、細胞壁の生合成を破壊すると考えられる。細胞壁は人の細胞にはないので、細菌だけを攻撃する副作用のない優れた医薬の開発が期待できる。分子量200近くの低分子化合物。 |
ピロリ殺菌力はヨーグルトなどの1万倍以上 |
なお、ピロリ菌の殺菌作用はヨーグルトやココアなども話題になっていますが、三木所長は「私たちもさまざまな殺菌作用を実験してきましたが、AHSSは別格です。精製した状態ならほかのものの1万倍以上の殺菌力をもっているだろう」と推測されています。研究課題はまだ多く残されていますが、三木先生は「AHSSは研究者にとって宝の山。この研究から、まったく新しい天然の抗生物質が誕生することを夢見ています」と語っておられます。
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